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科学的に解明!フロートタンクで「不安が軽くなる理由」

「フロートタンクに入ると、心が落ち着く」

この“癒しの感覚”には、実は科学的な裏づけがあることが、

2024年Float Conferenceで発表された研究によって

明らかになりました。



ドイツ・フライブルク大学の博士課程研究者である

Helena Hruby氏は、50人の健康な成人を対象に、

フロートタンクが心理的な健康や意識状態に

どのような影響を与えるのかを検証しました。


研究は、フロートタンクと

ベッドレスト(塩の壁に囲まれた部屋で横たわる)

という2つの条件を比較する形で行われ、

双方に60分間のセッションが設定されました。




◎ フロートタンクとベッドレストの違い


フロートタンクでは、完全に暗く静かな空間の中、

約35度のエプソムソルトを含んだ水に浮かびます。


外部からの刺激(光、音、温度差、触覚など)が

極限まで遮断され、無重力に近い浮遊状態が得られます。



一方、ベッドレストの条件では、

28度の塩の壁に囲まれた部屋でウォーターベッドに横たわります。


こちらも視覚・聴覚の刺激は制限されていますが、

フロート特有の“浮遊”や“身体の消失感”は起こりません。




◎ 測定された項目と心理的変化


実験では、参加者の感情や身体感覚の変化を定量的に測定するために、

以下のような質問紙とスケールが用いられました:

  • 吸収性(物事への没入しやすさ)

  • 主観的な時間のゆがみ(例:「60分のセッションがどれくらいに感じたか?」)

  • 身体の境界感(体の輪郭がどの程度はっきり感じられたか)

  • 不安、緊張、疲労、ストレス、リラクゼーション感


その結果、フロートタンクに入ったグループでは、以下のような特徴的な変化が見られました:

  • 不安・緊張・疲労が大幅に減少

  • 時間の感覚がゆがむ(長く感じる)

  • 身体の境界が曖昧になる(溶けるような感覚)

  • 変性意識状態(ASC)の発現が高まる



◎ 特に注目された「身体の境界の消失」


Hruby氏の研究で最も注目されたのは、

「身体の境界の消失(ボディ・ディゾルーション)」が、

心の癒しと密接に関係しているという点です。


参加者の中には、

「自分の体が空間と一体化するように感じた」

「体がどこまであるのかわからなくなった」

といった感覚を報告する人も多く見られました。


この“身体の消失感”は、

変性意識状態の中でも特に強力なものとされ、

フロートタンクの特徴的な効果のひとつです。



◎ 科学的分析による「完全媒介効果」


さらに、Hruby氏は、フロートタンクが不安を軽減する仕組みについて、

「媒介分析(メディエーション分析)」という統計的手法を用いて

検証しました。


その結果、


  • フロートタンク → 身体の境界が薄れる(ASC)

  • 身体の境界が薄れる → 不安が軽減される


という因果関係が確認され、

「身体の感覚の変化こそが、不安を和らげる鍵」であることが

明らかになりました。


身体の境界が薄れる体験を通じて不安が軽減されたことで、

フロートタンク自体が直接的に不安を下げているわけではない

ことも同時に示された結果となりました。


このことから、フロートタンクの癒しの効果は、

「ただ浮かんでいる」ことではなく、

「意識状態の変化」が本質であることが見えてきます。



◎ 吸収性とASCの関係


さらに、もともと“没頭しやすい性質”(吸収性)を持つ人は、

より強い変性意識状態を体験しやすく、

身体の境界も曖昧になりやすいことも判明しました。


これは、瞑想やヨガなどに慣れた人が、

より深いフロート体験を得やすい傾向があることと一致しており、

実際に参加者の約半数が定期的に瞑想やヨガなどの実践をしていた

とのことです。


◎ フロートタンクは「安全なASC体験装置」


Hruby氏は、フロートタンクが

薬物を使用せずにASC(変性意識状態)を安全に体験できる手段

であることに大きな意義があると述べています。


近年、海外では、サイケデリック(幻覚剤)を用いた治療も

注目される中、副作用や法的リスクのない方法として、

フロートタンクは今後の心理療法やメンタルケアの現場での

活用が進む可能性もあるかもしれません。


彼女は今後、13名の参加者による詳細なインタビューをもとに、

変性意識状態の質的な分析(マイクロフェノメノロジー)も進めており、

さらなる研究が期待されています。



◎ まとめ

フロートタンクの癒しの力は、

「感覚を遮断すること」や「水に浮かぶこと」だけではなく、

“身体と意識の境界が薄くなる体験”が、心を緩めることで訪れる

ということが、今回の研究から明らかになりました。


ただ休むのではなく、「意識の深部に触れる」新しい休息のかたちとして、

フロートタンクはこれからも多くの人の心を支えていくことでしょう。



※本記事は、YouTube「Altered states of consciousness during Floatation-REST, Helena Hruby | 2024 Float Conference」の発表内容をもとに構成しています。


 
 
 

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