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うつ、不安、PTSD、燃え尽き症候群…あらゆる症状への臨床研究


〜フロートタンクが「心の治療法」として注目される理由〜


うつ、不安障害、PTSD、燃え尽き症候群…これらの精神的な問題に対して、薬だけではなく「浮かぶ」というシンプルな方法が、実は世界中の臨床現場で研究され始めていることをご存じでしょうか?


2019年のFloat Conferenceで神経科学者のJustin Feinstein博士が行った講演「Establishing a Science of Floatation-REST」では、フロートタンク(感覚遮断タンク)を用いた数々の臨床研究と、浮遊がもたらす科学的効果が紹介されました。本記事では、その内容に忠実に、分かりやすくまとめていきます。



浮かぶことで、心の症状が軽くなる?


Feinstein博士の研究機関では、以下のような症状を持つ人々を対象に、フロートの効果を検証しています:


  • 一般的な不安障害やうつ病

  • PTSD(心的外傷後ストレス障害)

  • 摂食障害(例:神経性無食欲症)

  • 慢性の痛みやストレス由来の症状

  • 不眠やバーンアウト(燃え尽き症候群)


特に注目されているのが、「薬では十分な効果が得られなかった人」に対して、フロートがどれほど有効かという点です。



NIH(米国国立衛生研究所)が支援を開始


博士の研究チームは、アメリカの公的研究機関であるNIH(National Institutes of Health)から初の研究助成金を受け取り、正式に臨床試験を開始

これは、フロートが「補完的・代替的な治療法」として科学的に認められ始めた大きな一歩でした。


この臨床研究では、重度の不安とうつを抱える75名を3つのグループに分け、6週間にわたってセッションを行いました:

  1. 処方されたフロート群(週1回×6回)

  2. ゼログラビティチェアによる対照群

  3. 自由選択フロート群(頻度・時間ともに自由)




研究目的は「安全性」「効果」「好み」


この研究は以下の3つの視点からフロートの価値を測定しています:

  • 患者は継続的にフロートできるのか(忍容性)

  • 副作用はないのか(安全性)

  • 実際に症状が改善するのか(有効性)


そして、研究対象者はすべて“フロート未経験者”であり、多くは重度の不安や広場恐怖症を抱えていたため、従来の閉鎖型タンクでは参加できないという課題がありました。

そのため博士は、「オープンプール型」のタンクを新たに設計。これにより、心理的ハードルが下がり、多くの患者が初めてフロートに挑戦できるようになったのです。



フロートは薬に代わる「非依存性」の選択肢


現在、不安やうつの治療にはベンゾジアゼピン系(例:デパス、ソラナックスなど)の薬が使われることが多いですが、これらは非常に強い依存性があり、離脱症状も深刻です。

博士は「将来的に、薬とフロートを比較する“直接対決の臨床試験”を行いたい」と語り、ベンゾジアゼピンの代替としてのフロートの可能性に期待を寄せています。


実際に、博士の研究では、1回のフロートで不安スコアが大きく下がり、その効果が24時間以上続いたというデータが得られています。これは、薬剤の持続時間とほぼ同等、あるいはそれ以上であり、副作用や依存のない安心な方法として注目されています。



客観的データで浮遊の効果を可視化


研究では、自己申告だけでなく、以下のような生理データも取得されています:

  • 血圧(特に拡張期)が10〜15ポイント低下

  • コルチゾール(ストレスホルモン)の変化

  • 炎症マーカー(CRPやサイトカイン)の測定

  • 脳の報酬系(側坐核)の活性化


脳画像研究では、浮遊によって報酬系の働きが強くなり、「幸福感」が高まることが明らかにされています。特に、うつ病で「快楽を感じづらい(アナドニア)」人々にとって、浮遊がポジティブな刺激になる可能性が示されています。



バーンアウトにも有効?


WHO(世界保健機関)は、「バーンアウト(燃え尽き症候群)」を国際疾病分類(ICD-11)に正式登録しました。

スウェーデンの研究チームは、フロートがバーンアウト症状に有効であることを複数の研究で示しており、将来的には保険適用による浮遊セラピーが現実味を帯びてきています。

実際、オーストラリアではすでに障害者向けの制度でフロートセッションが公費負担されており、「薬を使わない癒しの選択肢」として、社会的にも受け入れが進んでいます。



まとめ:浮かぶことで、心が変わる時代へ


かつては“リラクゼーション目的”とされていたフロートタンク。しかし今では、科学的なデータとともに、うつ、不安、PTSD、燃え尽き症候群といった多様な症状への治療補助として、その可能性が広がっています。


浮かぶだけで、心と体が回復に向かう。そんな時代が、もうすぐそこまで来ているのかもしれません。


※本記事は、「Establishing a Science of Floatation-REST, Justin Feinstein | 2019 Float Conference」の内容をもとに構成しています。



 
 
 

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